花瓶の水漏れ、意外にどうしていいかわからずにいるという話も聞きますので、お役に立てれば。
①ワレやヒビで水漏れしてるのか、時間が経つとふわっと全体に漏れてくるのか、原因を確認します。
②まず、作品の汚れを取り除きます。
修理した後では、取れない汚れもあるからです。
熱いお湯に浸して(注意が必要、少しずつ熱くしていく)、汚れをほどき、スポンジなどで洗う。
それでも取れない時はお湯に洗剤を入れてしばらく浸してから洗う。
磁器なら、たいていはこれで見違えるように綺麗になります。
下記の写真は、水漏れするので修理して欲しいと旧知の方に頼まれた青磁の花器です。写真ではわかりにくいですが、まあまあ汚れてました。ご高齢になると、目も悪くなって汚れに気づきにくくなりますし、重い大きいものをしっかり洗うことが難しくなりますので、無理もないのです。
まずは、汚れを取り、とても綺麗になりました。磁器は吸水率はほぼ0%なので、古いものでもたいてい、この方法で綺麗になります。
ただ、修理後の写真を撮り忘れてしまったのが残念!
洗っているときに、剣山を花器の中で落としてしまったそうで、それから漏るようになったとか。思い出の品だそうで、大事にしてたのに、と悔やんでおられました。
イトジリもたいへん綺麗になったのですが、お見せできなくてすみません。
水漏れの原因がわかっていますが、確認します。
高台の中にヒビが大きく入っています。内側にももっとヒビが入っていました。
貴重なものなら、本漆で継ぐこともできますが、時間と手間と費用も半端なくかかりますので、ご本人の意向では水漏れが止まればいいとの事でしたので、もっと楽なものを使わせていただきました。
櫻井釣具店が販売している、フグ印の新うるしです。
おそらくはカシューあたりが原料なのかと思いますが、本物の漆に比べると断トツに簡単です。そういえば新うるしというネーミングは誤解しやすいと、私の金継ぎの先生は言ってましたっけ。
漆というのは、充填剤でもあり、接着剤でもあります。基本はヒビの部分にしっかり入れて、余分なものは拭き取り、しっかり乾燥させることが大事です。
乾燥が確認できれば、無塗装の板の上などに花器をおいて、水を9部目ほど入れてそのまま、一週間くらい水漏れがないか確認テストをして終了です。
テストがうまくいかない場合、まだヒビが埋まっていないなら、もう一度、やり直します。
もうひとつ、修理を頼まれたのは、昔の私の作品で、薪窯で焼いたものです。
備前の土で成形し、白化粧を施したシンプルな花器です。備前と白化粧を組み合わせるのは他ではないと思うのですが、長年、ずっと試してきて、自分のテーマとして取り組んでいます。
『気に入ってて、いつも使ってるのよ』と嬉しいお言葉ではあるのですが、そのせいか、カビのようなものが・・・
毎回よく乾燥させないでしまってしまったのでしょうか、釉薬をかけないやきものなので、そういうことになりやすいのです。備前は、素晴らしいやきものではあるのですが、扱いが少し難しい器かもしれません。
で、まず、素焼きよりやや低い温度で、窯で焼きます。700℃ぐらいでは、カビも染み込んでた有機物もみんな飛んじゃいますので、新品のように見違えて綺麗になりました。
残念ながら、写真、撮り忘れですが。スミマセン。
それから仔細に花器を見てみると、小さなヒビが・・・
まずはそちらを新うるしで修理します。
それから、水漏れテスト。
先ほどとおなじように、無塗装の木の板などの上に水を入れてテストします。
3日くらいすると、うっすら板が濡れてきました。陶器は吸水性があるので、こういう事もよく起こります。
私はCP-M6という薬剤を使います。無臭で、効果も高く、安全でもあります。ただ、個人で持つには保管も面倒で消費期限も短く高価なので、おすすめではありません。
花瓶のうっすらとした水漏れは、パラフィン、要は、ロウソクを使うのが一番簡単で安価だと思います。
ただ、できれば、電子レンジやドライヤーなどで花器の方を温めておき、薄く切ったロウを少し入れて溶かします。花器をゆっくり回しながら底と側面に、ロウが行き渡るようにします。そのまま冷まし、ロウが固まれば、またテストをして終了。
ロウの方を温めてはどうですか?という質問をかならず受けます。
ロウは後の処理が面倒なので(余ったのを流しに流さず新聞などに捨てる)、空き缶などに入れて湯煎にかけるといいです。
花器に注ぐときに口縁などに付かないように気を付けてください。
以上、長々と、花瓶の水漏れの対処法をあれこれ話してみました。
ヒビやワレ、カケ、などが目立つ位置にあるときは、漆などで修理してから、金を蒔く、いわゆる金継ぎをしてもいいと思います。手間はかかりますが、素敵になります。(金継ぎはまた、知識と技術と根気がいります)
がんばってみてくださいね。
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